「私だけが彼の良さを知ってる」

彼の音楽にふれる者全員に
そう思わせてしまう怪物、崎山蒼志
4歳で初めてギターを手に取ったその瞬間から
彼の”第二の人生”が始まってしまった。
中学3年生の時点でオリジナル曲は約300曲。
どう考えたって人生2周目の異端児、
そんな彼のNew Digital Single「逆行」
彼の”第三の人生”をも予感させる傑作だ。

軽やかだけど
どこか不安げな音の粒が集まった
疾走感溢れる短めのイントロに聴き入る間もなく震えそうで震えない心地の良い彼の声が
すっと耳に飛び込んでくる。

Aメロに入る前の一瞬の”間”で
大きめに息を吸い込むんだけど
この尊い呼吸音で軽くご飯3杯いける。
(あと、シャツのボタン一番上まで留めてるのがたまらなく好きですありがとうございます。)

サビ前、彼は流れるようにささやく。

揺らめく今日を手繰るよりも
揺らめく今日を掴んで、掴んでやる

儚くも、強い意思を感じる一節。
ここにかかる濁ったエフェクトが
とにかく洒落。
濁らせようって提案したの誰ですか、
今夜寿司でもおごらせてください。

ていうか、ちょっとまって。
しれっとレビューし始めてたけど
その前にMVが最高にクールすぎやしないか?
闇と光が調和しきれていない空間で
向かい合うドラムと怪物ふたりきり。
激しく、だけど繊細に
頭もちょっと振っちゃったりして
こんな崎山蒼志はじめましてなんだが?

ちなみに出会った頃の彼、貼っときますね。


この初々しく心ここにあらずな君が
こんなにも色褪せることなく
気持ちよく進化していく姿を
誰が想像できただろう。


曲全体を通していつもより少しだけ
”強気な彼”を感じさせる今作だが
終盤以下のフレーズが耳にはりつく。

欲しいものも なりたい人も
全部まとめてかっさらうよう
でもそんな完璧な中でも
痛みや虚無は絶えないから
穴だらけの心で 夜に浸かっていくのさ


夜に駆ける
という言葉遊びは聴いたことがあるが
夜に浸かる
それはきっと世界で彼だけのはず。
でも最初から存在していた言葉のように
この曲中だと不思議としっくりくる。
強気な歌詞の中に、しれっとこんな儚げな欠片を落とすのが本当に彼のずるいところだ。

神業というどこにでもある言葉では片付けたくないが、彼の演奏レベルは本当に神の仕業と思うほど「弾くために生まれてきた」人のそれなのだ。

橋本環奈が千年に一人の逸材ならば
崎山蒼志は光年に一人の怪物。
常識や流れに逆らって
音楽界を「逆行」しながらも
人々の心にこびりついて離れない、
そんな怪物の住む時代に生まれた私も君も
むちゃくちゃラッキーだってこと
忘れちゃいけないんだ。