いとです。
いきなりですが、バンド名というのはすごく重要ですよね。
まず第一印象がそこで決まるし、場合によってはバンド名から勝手に音楽性を推測され、聴いてすらもらえないことだってたくさんある。
かといって、見栄えと聞こえの良いネーミングなんてだいたいがすでに使用されていて、その他大勢のバンドと混同されるのがオチ。それならと目新しさを求めようとすれば、イロモノと勘違いされてしまう始末。
結局、どんなバンド名だって偏見は付きまとうし、その偏見を良い音楽で乗り越えていくしかない。
だからこそ、リスナーの側はバンド名に揺らぐことなく、純粋に音楽を聴いて好きか否かを判断するよう努めなければならない。
僕はそんなふうに考えているので、決して変わったバンド名だろうと、まかり間違っても音楽を聴く前に「ふざけてる」とか「イロモノだ」とか思うことのないように気をつけているんですよ。
そんなメンタリティを胸に秘めて、今日も未だ見ぬ良いバンドとの出会いを求めてYouTubeを放浪していると。
ハニーレモン・ジンジャー/あるくとーーふ
あるくとーーふ?はぁ?ふざけてんのか。
なんで棒2本あんだよ。絶対イロモノだろ。
いや!えと、ちがう!ちがうんですよ!
なんというか、僕くらいになると、わかっちゃうんですよね、サムネイルとかからにじみ出る雰囲気と、あとそれと、、バンド名とかからなんとなく。
この冴え渡るアンテナがキャッチするからに、こいつらは間違いなくイロモノ。
だってあるくとーーふの「ハニーレモン・ジンジャー」でしょ?
絶対メロディラインとか歌唱力とかで勝負してくるタイプじゃないし、歌詞はセンスなく笑わせにかかってくる寒いやつだもん、どうせ。そんなん聴かなくてもわかる。
まあでも一応。一応ね。
聴かないのはどうかと思うから答え合わせがてら再生してみるけどさ。
ほれ、クリック。
……ごめんなさい、あるくとーーふの「ハニーレモン・ジンジャー」めちゃめちゃ好きなやつでした。
メロディライン美しすぎるし、ボーカルの歌唱力えぐくないですか。高音の伸び、ラクレットチーズかっての。
音数も多く鮮やかな王道のキラキラポップ。かつ本格派。今すぐドラマタイアップとかもいけそう。上質な音楽。一生聴いていたいプレイリスト即追加案件。
でも、1曲好みだったからって、本当に良いバンドかはわからない。
この曲だけ才能が爆発したパターンだってありうるし、蓋を開けてみれば似たり寄ったりの曲調で「シナモンアップル・サイダー」とか言い出すこともないとはいえない。そんな悲しいことが起こってしまえば、もう二度とハニーレモン・ジンジャーを飲むことも、とうふを食すこともなくなるだろう。油断してはならない。
こちとら幼い頃からバンドなんて腐るほど聴いてきてるし、ちょっと聴いては期待して、他の曲を聴いては裏切られたことも数知れず。そんな1曲やそこら聴いたくらいで、“本物の良いバンド”判定するほどちょろい男じゃないんだよ。
これは本物。
本物の良ポップバンド。2曲聴きゃわかる。
彼らが鳴らすのは、お茶の間に流したって通用するほどのド直球ポップ。
しかも、明るくて耳障りが良いだけのエセポップじゃない。
そんなんじゃない
そういうもんなんじゃない
サビの頭に否定的な言葉をガツンと持ってきて惹きつけるのも巧いし、ここのメロディ、耳に焼き付けられて離れてくれやしない。全然とれないんだけど、なに、はんだごてでも使った?
あと、突然「僕は君をすきになる」とか言われるとドキリとしてしまう。
少し憂いのある「すきになる」が耳に優しく突き刺さるから、もうね、こんなんすきになっちゃうでしょ。
あ、ちょろくないです僕は。
それとあるくとーーふ、キーボードのフレーズがめちゃめちゃ良いんですよね。
と思って調べてみたら曲つくってんのキーボードらしい。どうりで存在感あるわけだ。
あるくとーーふは、キーボードのamicoが楽曲の世界観を細部までつくりこみ、その世界観をボーカルの利佳子が鮮明に表現しきるという構図が完璧にはまっている。だからこそ、他の楽器隊が高いクオリティで楽曲を彩ることにも成功している。こんなのフィクションじゃなくても許されるのか。
しかもあるくとーーふ、単なるキラキラポップバンドじゃない。
こんな攻撃的な音楽も鳴らせる。
まずベースイントロがかっこいいし、リフも上がる。何よりサビでからだが自然と動く。めちゃめちゃ良い。
というかこんなキレッキレで挑発的な歌い方までできる利佳子も、ボーカリストの新たな一面まで引き出しつつ、ポップの形に落とし込むソングライティングができるamicoも、純粋に実力がずば抜けてる。同年代に敵いないでしょ。名前の統一感かんっぜんに無視してるのもだんだんハイセンスに思えてきた。
MVこそないものの、最新EPに収録されているこの「HAPPY END?」は、本当に名曲中の名曲。メロディだけでも延々とリピートしてられるくらい良いのに、ボーカル含め全パートが最大限に魅力を発揮していて、かつ歌詞も良い。そんな都合良いことはないだろ、と思うかもしれかいけど、あるんだからしょうがない。
どうして僕らは
史上最悪のエンディングストーリーを
どうみても足りない愛の形で補うの?
この哀愁的で文学的なサビを聴いて愛くるしくなってしまえ。
そうだ、あなたもあるくとーーふを大好きになってしまえばいい。
ちょろくあれ。
どうせ好きなものがまたひとつ増えるだけだから。
それでは。