
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
2021年6月に劇場公開された、ガンダムシリーズの新作映画。
現在、お台場に立つ等身大立像でおなじみ「ガンダムUC(ユニコーン)」の大ヒットを受け、ガンダムシリーズをより広範囲に拡充する『UC NexT 0100』と名付けられた新プロジェクトの一環として公開された本作は、作画・音楽・演出どれをとっても非常にハイクオリティで、多くのガンダムファンの期待を裏切らない納得の出来だった。10月時点で観客動員108万人、興行収入22億円を突破し、これまでのガンダムシリーズ最高興行収入の「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編」に肉薄する勢いだ。僕も公開日に観に行ったけど、実際めちゃくちゃ良かった。
けど、待ってくれよ。
閃光のハサウェイが新規ファンを獲得している現状、10年前のガンダムファンに言っても信じてもらえなくない?
目次
閃光のハサウェイとは
※本記事では閃光のハサウェイについて、公式サイトで紹介されている程度の内容を記載しています。核心に触れるネタバレは書かないようにしていますが、一切情報を入れずにご覧になりたい方は先に本編を鑑賞することをお勧めいたします。
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』はガンダムシリーズの1つで、原作は富野由悠季の小説作品。本作はこの原作小説をベースとしており、”ファーストガンダム”と呼ばれる『機動戦士ガンダム』などと同じく『宇宙世紀』を舞台とする作品で、あのホワイトベース(主人公側の戦艦)艦長ブライト・ノアの息子『ハサウェイ・ノア』を主人公とする物語。
ストーリー/キャラ紹介
第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から12年。
閃光のハサウェイ 公式サイトより引用
U.C.0105——。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙へと連行する非人道的な政策「人狩り」も行っていた。そんな連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始したのが、反地球連邦政府運動「マフティー」だ。リーダーの名は「マフティー・ナビーユ・エリン」。その正体は、一年戦争も戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子「ハサウェイ」であった。アムロ・レイとシャア・アズナブルの理念と理想、意志を宿した戦士として道を切り拓こうとするハサウェイだが、連邦軍大佐ケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いがその運命を大きく変えていく。
なんだこの初見殺しなあらすじ紹介は。
当サイトをご覧いただいてる皆様におかれましては、ガンダムシリーズは全作品履修済みと存じておりますが、一応めちゃくちゃ噛み砕いて説明しますと、
・舞台は西暦の後の暦号「宇宙世紀(U.C.)」。増えすぎた地球人口・激化する環境問題に対し、人類は宇宙にスペースコロニーと呼ばれる巨大な居住区を建造し、移住していった
・U.C.0079年、サイド3と呼ばれるスペースコロニー地区が「ジオン公国」を名乗り、宇宙移民者の自治権を要求。地球連邦政府に対し宣戦を布告し、通称「一年戦争」が勃発(アムロとシャアもここで出会い、戦う)
・いろいろあって一年戦争は終結(ここまでがファーストガンダムの話)
・その後さらにいろいろあってアムロとシャアは仲間になるも、腐敗しきった地球連邦にやっぱり失望したシャアが懲らしめるべく小惑星を地球に落とそうとする ⇒ アムロたちと再び対立(これが逆襲のシャアの話)
・その続きが今作。主人公は一年戦争からのアムロの戦友ブライト・ノアの息子「ハサウェイ・ノア」。アムロ側から戦争を経験しながらも思想はシャアと共鳴するハサウェイの行く末とは…!
かなり端折ってこんな感じ。
初見にはきつくない?
この通り今作からガンダムに触れるのは、ストーリー面でかなりハードルが高いのでは?と個人的に思ってました。閃光のハサウェイだけを見ても正直、この複雑な背景を完全に理解するのは難しいんですよ(と同時に、単純な勧善懲悪や二項対立では片付けられない世界観こそガンダムシリーズの魅力でもあります)。
他にも懸念要素を挙げるとするなら
①ややネタバレになるが原作はかなりの鬱展開
②知る人ぞ知る作品
③メカデザインが尖りすぎ
などなど。
特に③メカデザについて
皆さんが『ガンダム』と聞いて想像するモビルスーツは、大抵

こういうのや

まあせいぜいこういうのだろう
それに対して閃光のハサウェイの主人公機が

これ。尖りすぎ。六本木のオブジェかい。
対するライバル機が

これだ。尖りすぎ。美大生の卒制かい。
ここまで見てもらうと、およそ大ヒットする作品には思えないというか、かなり人を選ぶロボアニメの印象を受けると思う。
なぜ売れたのか
そんな作品がなぜここまで大ヒットとなったのか、要因として主に以下の3つかなと。
・シンプルに作画が凄すぎる
アニメの要ともいえる「作画の良し悪し」。少しでも作画崩壊しようものなら青い鳥が羽ばたくSNSでオタクたちがスクショを掲載しバズりまくってトレンド入り、途端に”クソアニメ”と認定、『【悲報】ハサウェイ、作画酷すぎ』とまとめブログに転載され例のキャベツの画像が貼られまくる未来は想像に難くない。が、本作では杞憂も杞憂。何気ない食事シーンから手に汗握るアクションシーン・茹だるような夏の熱気や美麗なビーチなど実写と遜色ない没入感のあるスーパーハイクオリティな作画です。それこそファーストガンダムをリアルタイムで観ていた人は、日本のアニメはここまで進化を遂げたのかと感動すること間違いなし。
・雰囲気が洋画っぽい
そもそもガンダムシリーズが割とそうなんだけど、ロボアニメでありながらも環境問題やテロリズムによる世界の歪み、人間のエゴなど、フォーカスする切り口が非常にラディカルなんですよ。先述した通り単純な勧善懲悪モノからは程遠く、多種多様なキャラクターたちがそれぞれに信念だとか正義だとかを持っている。そういう意味では戦争映画だとかドキュメンタリーに近いと思っているんだけど、今作は演出面などが特に洋画ライクだ。
本編冒頭15分が公式YouTubeに載っているので2分だけでもいいから見てほしい。
政府高官たちが乗るシャトル「ハウンゼン」をハイジャックするテロリストたちのシーンなんだけど、表情の機微からアクションシーンの緊迫感に至るまで”洋画っぽさ”が伝わるだろうか。銃やガジェットを動かす時のSEも気持ちいいね。
あとこれは意外にも今までのガンダム作品であまりなかったんだけど、今作では市民目線でのMS戦闘が描写されているんですよ。

リゾート地が突如戦火に包まれる恐怖・パニックで逃げ惑う市民・巨大な人型兵器が眩いほど輝くビームライフルやビームサーベルで暴れ回る姿は、さながらハリウッドの怪獣映画のような臨場感と恐怖感を覚えました。「これロボアニメだよな?」と一瞬忘れるレベル。
・楽曲の良さ
3つ目は楽曲の良さだ。
劇伴はこれまで何度もガンダムシリーズに携わってきた新進気鋭の作曲家澤野弘之氏。
彼が手掛けたガンダムUCの曲がよく夕方のニュース番組等で使われているのを聞いたことがある。これまでは壮大なオーケストラ調の楽曲が多いイメージだったが、今作ではEDMやシティポップの要素も取り入れた挑戦的な楽曲もあり、かつ非常に耳馴染みが良かった。
そして主題歌は[Alexandros]だ。
疾走感のある正統派ロックチューンでありながら、MVはcityとかRocknrolla!時代のオマージュを感じさせるものとなっており、新規と古参の双方を向くという矛盾をさりげなく達成できてしまっている。この辺の”活動歴の長さ故のバランス感覚”は目を見張るものがありますね。映画のヒットと相まって再生回数もうなぎのぼり。謎MADが量産され本人たちにまで届く始末だ。
サブスク解禁されたのでぜひ
そんな閃光のハサウェイ、なんと10月16日から早くもサブスク解禁!
Netflix、Amazonプライムビデオ、バンダイチャンネル、Hulu、U-NEXTで、会員は追加料金なしで何度でも見られるとのこと。太っ腹~!!
これを機に皆さんもガンダム沼へ落ちてみるのはいかが?一見するだけでなぜここまでヒットしているのかわかると思います。あ、ここの読者はガンダムシリーズ全作品履修済みか。
それではまた~!
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