osageというバンドが次に来る。

こう書くと、「次っていつだ」とか「もう来てる」とかそんな声が聞こえてきそうなものだけど、関係ない。
いまこの瞬間に、実力に見合った勢いがまだ来ていないバンドに、相応の、いやそれ以上のムーブメントが起きてほしいとき、私はこういう言い方をする。いわば願望。もっと来い。


osageは2017年に下北沢で結成。
sumikaやマカロニえんぴつらが所属する音楽レーベル、muffin discsによる新人オーディション「muffin discs audition 2018」でグランプリを獲得。
muffin discs内に新たに設立されたmuffin Lab.から初の全国流通盤「ニュートラルe.p.」のリリースを果たした。

以降、着実にライブの動員を増やしつづけるosageが、1月20日、ついに2nd mini album 「root(s)」を世に解き放った。

新譜「root(s)」からリード曲の「letter」をぜひ聴いてほしい。


良い。ものすごく。

ポップなのに淡く切ない。
盛り上げどころでしっかり感情が盛り上がるし、音が耳にしがみついて離れない。
まさに何回でも繰り返したくなる。
「晴天爛漫」っていう造語も声に出して言いたい。


個人的にはこの曲、今までのosageのイメージを覆す新境地だと思っている。

これまでのosageのイメージは、「ウーロンハイと春に」によって形づくられていたからだ。

この曲は今回のアルバムにも収録されているけれど、自主制作盤の頃から彼らを支える代表曲だ。
実際、osageのことをこの曲で認知しているという人も多い。

日常から切り取られたノスタルジックに切なさをブレンドし、感情たっぷりに歌い上げるスタイルはまさにosageの武器とするところ。
「ウーロンハイと春に」という絶妙にそそるタイトルに「その時まで僕はきっとうまくやるさ」という未練たらたらの人間が下手くそに本音を隠す様を描くセンスまで、どこを切り取ってもosageにとって、ひとつの早すぎる到達点だった。


だからこそ、今回の「ウーロンハイと春に」を含む新譜で、違ったテイストの「letter」という名曲を仕上げてきたことにosageの急激な進化を感じた。
さすがmuffin discs。良い新人をとっ捕まえて新たな良さを引き出すのが抜群に上手い。しかも、これまでの武器を決して殺すこともしない。超優良レーベル。息子を所属させたい。

「root(s)」というアルバムを聴きほどいてみれば、かなり幅の広い作品となっている。


「ウーロンハイと春に」と並び、初期の頃から人気の曲であったこの「移ろう季節に花束を」まで収録され、他の新曲がかすんでしまうのではないかと危惧したものの、完全に要らない心配だった。

新曲にもそれぞれパンチを効かせた色濃い楽曲が並び、ひとつのアルバム作品としての完成度をより高めている。


しかも、このアルバムの収録曲5曲を短編小説化した電子書籍が 特設サイト からなんと無料で読める。情報量が多い。「収録曲を小説化」した「電子書籍」が「無料」と言われてもどこから喜んでいいかわからない。とにかく嬉しい。

ちょうど1曲を聴き終える合間に手軽に読めてしまうような短さながら、曲の解像度が上がり、一曲一曲への思い入れが勝手に強くなってくるからぜひ読んでみてほしい。


あともうひとつ、osageというバンドについて個人的に言及しておきたいことがある。

ボーカル山口ケンタの歌声についてだ。

彼の歌は単純にすごく上手いし、いい意味で癖もある。ファンのつきやすい声といえる。

それゆえに、「○○に似てる」と言われてしまいやすい。

これはある意味でしかたのないことなのかもしれない。
実力もあって個性もあるものに出会ったとき、人は、自分が既に知っている何かに結びつけて納得したがる生き物だからだ。

「良いもの」だけど、どこがいいのだろう。そうか、あれに似てるからだ。

これは実力で売れてきたアーティストは誰しも通る道なのかもしれないけど、osageはいままさにその道中にいる。
まだ、多くの人が彼らの音楽に出会いはじめたばかりだからだ。

いずれ世界がosageを知り、山口ケンタの声が山口ケンタの声として世界に響き渡ったとき、きっと他の良い若手バンドが「osageに似てる」と言われていることだろう。


そういう存在になるまで、osageは間違いなく駆け上がっていく。

これからの彼らの音楽からますます目が、耳が離せない。

それでは。